東京女子医科大学の施設建設をめぐる背任事件で、警視庁は、逮捕された元理事長が、別の建設工事でも建築士に不正な報酬を支払い、大学におよそ1億7000万円の損害を与えたとして、3日、再逮捕しました。およそ5000万円を自身に還流させていたとみて調べています。
東京 新宿区にある東京女子医科大学の元理事長、岩本絹子容疑者(78)は、新宿区のキャンパスの施設建設をめぐり、建築士に不正な報酬を支払い、大学に1億1700万円の損害を与えたとして、先月、背任の疑いで逮捕されました。
建築士は大学の「建築アドバイザー」の肩書を持っていて、警視庁は2022年に荒川区から足立区に移転した医療センターの建設でもこの建築士に不正な報酬を支払い大学におよそ1億7000万円の損害を与えたとして、3日、元理事長を再逮捕しました。
建築士の口座には、月額で500万円以上が報酬として振り込まれていましたが、警視庁は、元理事長が口座にプールされた資金の中からおよそ5000万円を自身に還流させていたとみて捜査を進めています。
元理事長の認否については明らかにしていません。
元理事長の自宅や関係先からは多額の現金や金塊が見つかっていて、警視庁は還流させた資金との関連を捜査するとともに建築士や、現金の運搬に関わった側近の元職員についても任意で調べています。(25/2/3 NHK)
再逮捕容疑は2020年3月~21年9月、東医療センター移転に伴う新病棟建設工事の建築アドバイザー報酬などとして、16回にわたり、1級建築士の男(68)に計約1億7000万円を不正に支出し、同大に損害を与えた疑い。
建築士には報酬などとして計約1億8400万円が支出されたが、同課は、本来大学側が支払うべき金額は1400万円超だったと判断した。(時事通信)
東京女子医科大(東京都新宿区)の新校舎建設を巡る背任事件を受け、日本私立学校振興・共済事業団が、同大への2024年度の経常費補助金(私学助成金)を全額不交付とする方針を固めたことが29日、わかった。
同大は23年度には約20億円の交付を受けていた。事業団は30日に運営審議会と理事会を開き、正式に決定する。~
同大の23年度の助成金約20億円が総収入に占める割合は1%余りだが、私学助成金の不交付により申請できなくなる補助金もあり、経営への影響が広がりかねない。
事業団は昨秋、東京女子医大を含む4大学について、私学助成金の交付を「保留」としていたが、ほかの大学も不交付や減額とする方針だ。~(25/1/30 読売新聞)
東京女子医大の発注工事を巡り、同大の岩本絹子前理事長(77)=7日に解任=の側近が管理していた三つの会社が2016~23年、元請け4社を通じ「コンサルティング料」名目などで少なくとも計1億数千万円を受け取っていたことが24日、共同通信が入手した経理関連資料や大学の第三者委員会の調査で分かった。
側近は同窓会組織「至誠会」の元職員。大学に出向し、この時期に経営統括部次長を務めるなど工事の発注業務を担っていた。
資料や関係者によると、3社から16~21年に側近の親族名義などの口座に計7千万円以上が送金されていた。3社の代表はいずれも前理事長が院長を務めていた産婦人科の女性従業員だったが、実際には側近が管理していた。
元請けの社長の1人は取材に、側近から3社を紹介され「コンサルなどの契約を結び大学以外の工事をあっせんしてもらった。約10年間で1億円以上支払った」と説明。「大学側へのキックバックはなく、工事費の水増しもない」とした。
第三者委などによると、大学は総額約33億円の工事を4社に発注した。(24/8/24 共同)
東京女子医大の教授有志が2日、私立大を所管する文部科学省高等教育局の幹部に面会し、理事会への指導を促した。
同大を巡っては3月、同窓会組織「至誠会」から勤務実態のない職員に給与が支払われたとする特別背任容疑で、警視庁が大学本部や岩本絹子理事長の自宅などを一斉捜索した。至誠会が大学の推薦入試で推薦者を決める際、会への寄付金を考慮に入れていた疑いなども指摘されている。(24/7/2 東京新聞)
東京女子医科大学が揺れている。経営悪化や退職者の続出で医療現場に影響が出るなか、岩本絹子理事長(77)の元側近職員に対する同窓会組織からの給与支出を巡り、警視庁の捜索を受けたためだ。
大学側は「問題はなかった」としているが、学内には理事長の辞任を求める動きがあり、学生からも不安の声が上がる。
「元職員は報酬に見合う以上の仕事をしていたと認識しており、問題はなかったと考えている」。1日に開かれた職員向けの説明会で岩本氏はそう述べた。
警視庁は3月29日、一般社団法人法の特別背任容疑の関係先として同大を捜索した。元職員の50歳代の女性は2020~22年、同窓会組織「至誠会」での勤務実態がないのに約2000万円の給与を受け取っていた疑いがある。
元職員は岩本氏が都内で営む産婦人科クリニックの元従業員で、至誠会から15年10月に同大に出向し、学内の人事や調達を担う「経営統括部」次長を務めた。関係者によると、岩本氏の秘書業務も兼ね、幅広い権限を持っていたという。
大学と至誠会の発注工事を巡っては、元職員が運営に関与した会社が工事の元請け業者から1億円超を得ていた問題も浮上している。
岩本氏は説明会で「私にはそういうお金は流入していない」と語り、別の理事も同じ見解を示した。
東京女子医大では混乱が続いてきた。14年には、手術後に鎮静剤「プロポフォール」の大量投与を受けた男児(当時2歳)の死亡事故が発生。
翌15年、診療報酬の優遇措置が受けられる特定機能病院の承認が取り消され、15年度は約38億円の赤字だった。
内部資料によると、14年12月に副理事長となった岩本氏は不採算施設を集約し、18年9月までの3年半で約45億円の人件費を削減。理事長に就任した19年度には約33億円の黒字にさせた。
だが、コロナ禍の20年6月には、職員への夏のボーナスの支給を見送ると宣言。後日撤回したものの反発が広がった。
新宿区にある大学病院本院では16年度から22年度に医師が881人から675人に、看護師は1117人から941人に減少。病床稼働率は約5割にとどまる。
ある医師は「人手不足で危機的状況だ」と語る。岩本氏は昨年4月まで至誠会の代表理事だった。だが、退任後の同10月、至誠会は岩本氏と元職員らを相手取り、報酬が不当として計約1億4400万円の損害賠償を求めて提訴した。
訴状では、元職員が至誠会本部などに「出勤したことはない」と指摘。岩本氏が元職員の利益を図るため、「権限を乱用した」と主張した。岩本氏や元職員側は、「(元職員は)至誠会の業務も行っていた」などとして係争が続いている。
同大は文部科学省から内部調査を行うよう指導を受け、第三者委員会の設置を決めた。一方、医師ら職員有志は岩本氏の辞任を求める要望書を大学に提出する方向だ。
医学部の学生は「何も説明がなく不安だ。授業に影響が出ないようにしてほしい」と話した。(24/4/15 読売新聞)
日本の医療界をリードしてきた東京女子医科大学が、いま存亡の危機に立っている。経営トップの岩本絹子理事長の「疑惑のカネ」が背任罪にあたるとして、女子医大OG(卒業生)が警視庁捜査二課に提出した告発状が、3月27日に受理されたことが関係者への取材でわかった。これによって、「疑惑のカネ」に関する捜査が、いよいよ本格的に始まる見込みだ。
医師や看護師の大量退職に始まり、崩壊状態になったICU(集中治療室)で、医療ミスによる患者の死亡事故が発生した女子医大病院。患者数の減少に歯止めがかからず巨額の赤字を累積している一方、診療現場の医師が中心となって正常化に向けた動きも起きている。
こうした状況をリアルタイムで報道してきた、シリーズ「東京女子医大の闇」。これまでの15回分の概要をまとめた。(23/3/31 週刊文春)