>財団法人の日本漢字能力検定協会の元理事長らが、架空の業務委託で協会に損害を与えたとして、背任の罪に問われた事件の裁判で、京都地方裁判所は、「協会の財産を私物化した」と指摘して、元理事長ら2人に懲役2年6か月の実刑を言い渡しました。
日本漢字能力検定協会の元理事長、大久保昇被告(76)と、長男で副理事長だった大久保浩被告(48)は、2人が役員を務める実体のない関連会社への業務委託費の名目で、協会におよそ2億9000万円を不正に支出させたとして、背任の罪に問われました。
判決で、京都地方裁判所の笹野明義裁判長は、「元理事長らは『正当な業務委託だった』と主張するが、関連会社が協会の業務に関わったかのように工作したり、正当な取り引きを装ったりして根拠のない支出を繰り返した」と述べ、無罪の主張を退けました。
そのうえで、「協会に支出させた金を関連会社の役員報酬として得ていたもので、立場を悪用して協会の財産を私物化した悪質な事件だ」と指摘し、大久保元理事長と元副理事長に、いずれも懲役2年6か月の実刑を言い渡しました。
大久保元理事長らは判決を不服として控訴しました。(12/2/29 NHK)

>検察側は、両被告が実態のない両社に発注を繰り返したのは、報酬や給与、株主配当などで自分や親族が利益を得るためだったとして「財団法人を私物化した」と指摘した。
一方、弁護側は「両社はそれぞれ協会に関する広報や調査の活動をしていた。正当な対価で、協会に損害を与えていない」と全面的に無罪を主張していた。(毎日新聞)

>検察側はメディア社と文章工学研究所について「事務所はなく、従業員もいなかった」「1998年以降は休眠状態」とそれぞれ指摘。
メディア社と研究所から昇、浩両被告や親族へ報酬が支払われていた状況を踏まえ、「立場を利用した私利私欲の行為で、財団法人を私物化していた」と主張していた。(朝日新聞)

>「日本漢字能力検定協会」の元理事長らが親族企業2社との架空取引で協会に約2億8700万円の損害を与えたとされる事件で、背任罪に問われた元理事長の大久保昇被告と長男で元副理事長の浩被告の判決が29日午後、京都地裁(笹野明義裁判長)で言い渡される。
検察側は親族企業を「ペーパー会社」と追及し、両被告は「でっち上げ」と無罪を訴える。
双方の主張が対立する親族企業の「実体」を地裁がどう判断するかが焦点となる。
裁判は▽両被告が役員の広告会社「メディアボックス」と調査研究会社「文章工学研究所」(文研)の実体▽協会の損害の有無-が主な争点。
検察側は親族企業に従業員の雇用などがなく「実体はなかった」と指摘。メ社に発注された仕事は協会独自で行え、文研の業務も協会と無関係とした。
親族企業との取引には理事会承認など制限があるが「両被告は問題のある支出と認識し、理事会にあえて報告しなかった」と強調した。
動機面は、親族企業からの報酬などで自分や家族の利益を図ろうとしたとし、支出時の見積書や稟議書の不作成などを根拠に「恣意的に決定した多額の支出で協会に損害を与えた」と述べた。
弁護側は「メ社は協会を含む親族企業グループ全体の宣伝を担い、文研も協会のために仕事した」と反論。
協会業務に対するメ社の関与を否定した協会職員の証言を「現体制を守るための虚偽」とした。
親族企業との取引も文部科学省の指導後に理事会承認を得たとして「問題ない」との認識を示した。
不合理とされた支出額は「外部委託ならもっと多額」と正当性を主張。
浩被告の自白調書は「検察官に威圧的な態度で迫られた結果。信用性のかけらもない」と批判した。(2/26 京都新聞)


>日本漢字能力検定協会が、大久保昇・前理事長と長男の浩・前副理事長が親族企業4社との取引で協会に損害を与えたとして、2人と4社に対し、計約27億4000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が27日、京都地裁(滝華聡之裁判長)であった。
被告側は答弁書で、「協会に損害を与えた事実はない」と請求の棄却を求め、全面的に争う姿勢を示した。
2人は、2社に実態のない業務を架空委託し、協会に2億8700万円の損害を与えたとして背任罪に問われた刑事裁判で無罪を主張しており、刑事、民事両方の責任追及に真っ向から対抗する形となった。
答弁書では、2人が協会の理事会の承認を得ず、4社に書籍販売や検定の採点などの業務を委託したとする協会の主張に対し、「4社との取引は、今年4月に理事会と評議員会で追認決議を受け、有効な契約となっている」と反論。
こうした取引で協会に不要な支出をさせたとされる点については、「協会は、4社と一体となって漢検事業を発展させ、2人の貢献で莫大(ばくだい)な利益を得た。4社への委託費は相当性のある金額で、取引による損害は発生していない。仮に他の業者に同じ業務を委託した場合、より高額な費用が発生した」と主張した。(11/28 読売新聞)

>世界にたった1台しかない車やクルーザー、さらには不動産、株を買いあさる――。日本漢字能力検定協会の背任事件で、京都地検は29日、前理事長・大久保昇、浩の両被告が、関連会社との取引などで稼いだ資金の多くを個人的な趣味や投資につぎ込んでいた実態を明らかにした。
一方、協会は前理事長らと決別し、運営改善に取り組むが、父子が受検者280万人の公益事業を“食いもの”にした代償は重い。
京都地検はこの日、2人が使った協会の資金約30億円について、詳細に説明した。
発表によると、関連会社を使って協会の資金の管理を始めたのは、「協会がもうかっているのに、自分たちの実入りが少ない」という自分勝手な理屈だったという。
昇被告はバブルの時期から国内外で次々と不動産を購入。しかし、バブル崩壊によって、1995年頃には約6億円の負債を抱え、返済のための利息を合わせると年間約3000万円の支払いを迫られる状態に陥った。それにもかかわらず、03年4月以降は、個人的な株取引に計約3億円を使っていたという。親族企業「オーク」からの借り入れは5億円を超えていた。
一方の浩被告。関連会社から得た多額の役員報酬などを浪費し続けた。
96年以降、私的に使用した額は計約23億円にのぼるといい、地検は「世界に1台しかない車を買ったり、クルーザー、投資信託、海外旅行などに使ったりしていた」という。
昇被告の娘に関連4社から支払われたとされていた報酬の大半も、両被告が使ったという。娘には06~08年度の3年間だけで、1億円以上が支給されていた。
損害賠償請求など本格化へ
協会は今年度から検定料を500~100円引き下げ、21日に個人対象の漢字検定を行ったが、受検者は昨年同期の約7割にとどまった。大久保前理事長側に対し、損害賠償請求や、商標権、特許権などの譲渡を求めており、今後、交渉が本格化する。
運営の透明化には、刷新された理事、評議員の役割も重要だ。8人いた理事のうち唯一残留した水谷修・名古屋外国語大学長(76)は「今まで運営について知ろうとしなかったことを反省し、体制の立て直しと、漢検の目指す将来構想を議論する責任を果たしたい」と語った。
協会はこの日、追起訴事実と同内容で両被告を京都地検に告訴し、「職員一同、公益法人という原点に立ち返り、法令規範を遵守して事業の継続に努め、『新生漢検』に向けて、生まれ変わるべく、まい進している」とのコメントを発表した。
今回の起訴について、4月16日付で就任した鬼追明夫理事長(74)は読売新聞の取材に対して、「今後、協会としては大久保父子体制を完全に払拭するとともに、裁判を注視したい」と語った。「現在、職員は前理事長らの暴走を止めることができなかったことを反省し、協会をきちんとした公益法人にするために一生懸命、働いてくれている。組織の質を高める努力を続けたい」と話した。(6/30 読売新聞)

>背任罪での立件総額は約2億8700万円になり、一連の捜査を終えた。
地検は、2人が昇被告の退職金名目などで協会資金を引き出し、私的に流用したとみて、業務上横領容疑でも捜査したが、全額が協会に返済されていたことなどから立件を見送った。
起訴状によると、2人は、昇被告が代表を務める調査会社「文章工学研究所」に対し、調査研究費の名目で04年11月~08年10月に計2700万円を不正に支出し、協会に損害を与えたとされる。
2人は、昇被告が代表の広告会社「メディアボックス」へも、同様の手口で約2億6千万円分の架空業務を委託したとして、既に起訴されている。(6/30 朝日新聞)

>大久保昇容疑者と、浩容疑者が、関連の調査会社に業務を委託したように装い、過去5年間に計2700万円を支出していたことが協会関係者の話でわかった。
委託費は同社の役員を務める親族の報酬に流用されていたという。架空取引で協会に損害を与えた可能性が高く、京都地検は来週にも、この新たな背任容疑で2人を再逮捕する方針。
協会関係者や内部資料によると、調査会社は昇容疑者が代表を務める「文章工学研究所」。
同社は事務所を持たず、協会との取引については両容疑者が決定していた。
協会は98年に同社と業務委託契約を結び、文章の作成技術に関する調査などを名目に、07年度まで年600万円の委託費を支出。08年度も300万円を支払っており、委託費の総額は6300万円にのぼるという。
委託費はすべて、同社取締役を務める昇容疑者の長女の報酬に充てていたとされる。
京都地検は、このうち背任の公訴時効にかからない過去5年(04~08年度)の2700万円の委託費について容疑を固め、再逮捕するとみられる。
同社は、昇容疑者の知人が実質的に経営していた文章ソフトの研究開発会社が前身。昇容疑者経営の「オーク」が98年10月に買収し、昇容疑者が代表に、浩容疑者ら親族3人が役員に就任した。
この知人は同社のただ1人の社員として雇用されたが、協会からの委託業務については一切知らされていなかったという。
協会関係者は「文章工学研究所は昇容疑者が経営権を握った後、ペーパー会社と同然になった。長女も含め役員に勤務実態はなく、協会との一連の委託取引も架空だった」と証言する。
京都地検は8日にも、昇容疑者が代表を務める「メディアボックス」に対する架空の業務委託で、協会に約2億6千万円の損害を与えたとする背任罪で両容疑者を起訴。その後、再逮捕に踏み切るとみられる。(6/4 朝日新聞)